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課題曲の中の3つの課題・2013(その5)

(※編注:本記事は櫛田先生のFacebookページに掲載された内容を、加筆・修正したものです。)

V. 流沙(広瀬 正憲)

 砂の描く模様や造形の変化を、音の色彩で表現する、という解り易い内容の楽曲です。自然の力によって、少しずつ変化して行く姿、ときおり風にさっと表情を変える、など、イメージを豊富に創りだすことも出来ます。変化し続ける姿を、音楽として描くと、終止を持たない、とりとめのないものに思われるかも知れませんが、音の色彩で描かれた、一つの音画を求める楽しさが、充分に得られる良い曲です。


(1)移り行く音色の変化の中に、旋律ラインの動きを、光の陰影のように、とらえて見ましょう

 冒頭の A.Sax.、A からの Oboe 、この旋律はパート・セクションの多彩な組み合わせ、さまざまなリズム・アクセント、この彩りの中に、歌われて行きます。この形で次々に現われる、砂の文様を繊細にとらえ、音の色彩を変換して行く表現を続けます。
 

(2)和声の機能を基に構築される音楽から解放された、感性で色付けされた音の世界に入ろう

 各部分は、構成された音列によって作られています。そこには、その音列が発する、色彩感があり、音色旋律を構成しています。ただ、音列は定められているものの、和声は偶発的なもので、いわゆる機能を果たすわけではありません。パート・セクションが作り出す、極めて繊細な音色を、どのような色彩で塗りつぶして行くか、バンドの持つ感性の鋭さ・深さにかかってくるわけです。


(3)ほとんど拍子感のないフレーズの連続を、どう構成して、表現して行くか

 各部分が、それぞれに拍子が与えられていますが、拍子感と云うよりは、フレーズ感としての拍子分けのように思います。冒頭にしても、2拍子といった拍子の設定でなく、フレーズの譜割りから来る拍子設定に見えます。E からの 8分の7(4+3)にしても、確かに旋律ライン・和声リズムは、そうとれるのですが、ベース・ラインが、別の拍子を刻んでいます。
 要するに、通常考えられる、音楽の拍子・リズムといった、ベース(和声進行も含めて)から離れ微妙な音色の流れを構成して行くことになります。

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【ウィンズスコア編集部より】
下のコメント欄(comments)にて、櫛田先生へのメッセージ・質問等を受け付けております。後日まとめて、先生にお返事していただきますので、疑問や悩みをぶつけて下さい!

課題曲の中の3つの課題・2013(その4)

(※編注:本記事は櫛田先生のFacebookページに掲載された内容を、加筆・修正したものです。)

IV. エンターテインメントマーチ(川北 栄樹)

 幸せ・楽しみあふれる、ストリート・パレード用のマーチでしょう。設定されたテンポを、少し落として、パレードに合った早さが、曲想の表現にも良いのではないでしょうか。この曲は、美しく流れる旋律が、構成の中心・主体となっています。旋律ラインをとって行く、パート・セクションの歌い方が、この曲の演奏表現の主体を作り出して行きます。フレーズを生かすのは、付点音符のある部分のレガートと、軽いスタッカート、といった一寸した部分の感性の細やかさで、このポップ感覚のマーチを、歌うことが出来ます。
 とは云っても、なかなかの曲者と云うか、余程考えて(コンクールと違ったら、手直しするのですが……)取り組まないと、なんとなくやってしまうと、不自然さが残って、グレードの低い演奏に評価されてしまいます。落とし穴だ !!


(1)適確なテンポ設定で、聴衆と一緒になって、乗って行ける楽しいマーチにしたいのですが
  
 全体にわたって、ベース・ライン(前打ち)と、Hrn.・Trb.の後打ちが、明確に設定されています。このリズム表現が、絶対的にこの曲の核になります。この2つのセクションのコンビネーションは、徹底的に創り上げて行きます。例えば、Aの2小節目から3小節目にかけてのベース・ライン1つ取り上げても、この不自然さを解消する手だては、なかなか難しいです。
 C の刻みも、不自然です。しかも、4拍子の中に、突如、2拍子が入ってくる、しかも、刻みは続いている。どうしましょう。
 Trio のリズムも、この速さのテンポでは、1拍目ウラからの4分音符の味(長さ)が出ないです。
幾多の困難を克服して、乗って行ける楽しいマーチに、導く指導者の腕と、バンドのセンスが、試されるのでしょうか。グレードの低いバンドは、より低く、それなりのバンドは、平凡な演奏に、なってしまう危険性大です。
 

(2)フレーズを大きく捉えて、広がりのある音楽にしよう あくまでも戸外の音楽です

 第1マーチでも、レガートとフレーズを混同することもなく、4小節・4小節のフレーズを、しつかり作って行きます。第2マーチも同様に、6小節・4小節のフレーズです。Trio 細かくフレーズが分けられているようですが、F 全体・G の全てを捉えた、空へ向かって広がって行く、胸を広げた大きなフレーズを試みて下さい。細かく分けられたフレーズを意識して、短く言葉を切ったようなフレーズは、絶対に避けましょう。


(3)各部分のオーケストレーションを意識して、色彩感のある輝きを作り出そう

 マーチを結んで行くブリッジの部分は、マーチの演奏では色彩感を持って、ドラマティックに仕上げたいですね。D は、その見せ場・聞かせどころです。D 後半の ファッと浮き上がる cresc. Trp.の輝き、前半のクライマックスです。Trio H でのブリッジにも、ドラマティックなオーケストレーションが待ち受けています。Trp.のオクターヴ・ユニゾン、木管群の 7連符からのトリル、Hrn.のグリッサンドなど、見せ場を持って、最後は、molto allargando から a tempo とこの格好良さ !!

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課題曲の中の3つの課題・2013(その3)

(※編注:本記事は櫛田先生のFacebookページに掲載された内容を、加筆・修正したものです。)

III. 復興への序曲「夢の明日に」(岩井 直溥)

 ミュージカルの序曲か、フィナーレを思わせる、ポップ感覚の楽しい曲です。「夢の明日に」という曲名が、この曲の主題を、大変上手く表していると思います。パート・セクションが、しっかりとした編成を持った、大きな編成のバンド向きの楽曲です。音程・音色ともに、演奏技術のレヴェルの高さが、求められます。簡単なアレンジメントのポップ感覚では、まず処理が出来ませんから、ポップ感覚だからといって、平易に取り組んではいけません。


(1)ポップ感覚の音型の奏法をしっかり把握して、フレーズそのものから、ポップ感覚を表現しよう

 ポップ感覚を表現するには、基調にしたビートに乗った、リズム感あふれる演奏が……、と云われます。確かに、リズム・セクションとベース・ラインの作り出すビートは、その骨格ではありますが、ポップ感覚を持った、フレーズ・音型の演奏法(約束事とも云える)による表現も、大変重要なことです。付点8分音符 + 16分音符 の表現・16分音符 + 8分音符 + 16分音符 のシンコペーションの表現、この2つが基本になります。付点音符が長め・マルカートで、シンコペーョン・ノートは、スタッカートして短く、と云ったことです。また、4分音符→8分音符→8分音符 のフレーズは、4分音符へのアタックは強くテヌートで、8分音符は、スタッカートでといったところでしょう。サウンドは、各楽器の特徴あるサウンドを、クラシックとは反対に、しっかりと前面に出します。


(2)コードのスタイル、テンション・ノートの確かな把握と表現で、完璧なポップ感覚を

 有り難いことに、コンデンスド・スコアに、コード・ネームが付けてありますから、コード進行を把握すること、コードのテンション・ノートを見つけ出すことは、そう難しことではありません。
 7th コードが多いので、そのスタイルとサウンドを、感覚としてしっかり把握していないと、旋律だけの音楽になってしまいます。7th コードの進行を、日常的にトレーニングの中に、組み込んでおく必要があります。例えば、冒頭の2小節目で、出てくる Db major7(9)→ C 7(#9)では、コード・ノートとはどの音で、テンション・ノートはどの音で、だれが演奏しているのか、といったことも理解した上で、練習を進めて行かなくては、ならないと思います。


(3)各部分の表現には、一つのシーンが写し出されたような、鮮明なイメージが欲しいです

 D の Piu mosso から a tempo そして、poco rit. の部分は、どんなシーンを用意しますか。Bb7(b9・13)のコードには、どんなポーズが待っているのでしようか。続く E のA.Sax.のソロは、どんな想いなのでしょうか。こうして見ると、この短い序曲には、このミュージカルの色々なシーンが満載です。

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課題曲の中の3つの課題・2013(その2)

(※編注:本記事は櫛田先生のFacebookページに掲載された内容を、加筆・修正したものです。)

II. 祝典行進曲「ライジング・サン」(白岩 優拓

 この曲は、形式・オーケストレーションともに、マーチの基本的なスタイルを持ちながら、なお新鮮な感覚のある、印象を与えてくれる行進曲です。逆に、その意味では普通にマーチというイメージから離れた、祝典曲と呼ぶ方が、良いかも知れません。


(1)通常の行進曲との違いを知って、個性ある曲想を創り上げよう

  
 冒頭、ファンファーレ(拍子感を超えた・なぜ rit. ?)があって、序奏(緊張感 !)があって、第1マーチと、すでに祝典曲の形を持っています。第1マーチですでに、旋律ラインの跳躍、代理コードを含めコード進行、対位旋律と、表現に多彩さと個性を要求される要素が、多く見られます。Trio の旋律ラインも、跳躍音程をうまく配置されて、フレーズの大きさが期待されます。ブリッジ Gへの半音転調の 想定外の動きが、新鮮さを感じます。


(2)自然な流れの中に、印象的な表現を上手く取り入れよう


 第1マーチの最初のフレーズ、G→Fの跳躍を含むレガート、この流れを印象的に表現しなければなりません。Trio の美しい旋律は、フレージングの取り方・表現の仕方で、楽曲の品格・品位が出来上がります。Score に記された、2+2+4 のフレージングを、設定しながらも、8小節の大きなフレーズが、創り出されるようにしましょう。自然に、大きく広がって行く、詩的なラインとでも云いましょうか。Picc. ・Xylo. の装飾も、dolce なんですね。ここでの dolce は、優しさ・柔らかさ・愛情の深さ、といった dolce です。


(3)パート・セクション間のバランスを、しっかりした意図を持って

 オーケストレーションが、多彩に組み合わされ、構成されたスコアになっています。第1マーチの繰り返し B にしても、加わったオクターブ上の旋律、対位旋律とのバランス、指揮者の創造センスが問われます。Trio の F の dolce の旋律・対位旋律に対する、Trb.の刻むリズムとハーモニーのニュアンス、I からのPicc.・Fl.・Glock.の微妙なバランス、Tamb.の音色などなど、細かくチェックすることが、一杯あります。

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課題曲の中の3つの課題・2013(その1)

(※編注:本記事は櫛田先生のFacebookページに掲載された内容を、加筆・修正したものです。)

 この季節、いずれのバンドも課題曲・自由曲も決まり、本格的にコンクール・モードに突入しているはず。そのため毎日の練習が、些か単調になることがあります。今ひとつ、と云いながらも、何となく曲になっている、と云う思い込みは怖いですね。
 ここはもう一度、真っ白なページを広げて、新しく書き込むつもりで明日を迎えることにすれば、良いのではないでしょうか。
 僕の上げた、それぞれの課題曲の中から3つの演奏表現ポイントを、もう一度見直してはいかがでしょうか。一つひとつのポイントを、しっかり固めることで、より自信に満ちた演奏が得られると思います。


I. 勇者のマズルカ(三澤 慶)

  この曲は、アグレッシブに捉えたとき、メンバーのモチベーションも上がり、バンドは生きてきます。特徴あるリズム・大きな跳躍音程など、ハードルは高いに違い有りませんが、逆にバンドの水準を示すには、格好の課題曲です。


(1)形式をしっかり把握して、その上で、ストーリー性を見出す
  
 前奏・「提示部」主題A・主題B・「中間部」・「再現部」主題B・主題A・コーダ の複合3部形式で作られています。
 提示される勇者の姿は、主題A(A〜C)で、その毅然とした律動感を、主題B(D〜F)では、品格のある優雅さを見せます。中間部(I〜L)は、アダージョ姫との出会いと愛のロマンスが情熱的に語り上げられます。次第に高まる胸の鼓動が、ボレロのリズムに乗って……。この設定は、些か安っぽいかな、とは思いますが、この曲の熱情を乗り切るには、こういった、ストーリー性が必要です。そうでないと、再現部での提示部と異なる表情が創り出せなくなります。再現部(M〜P)は、愛は実り、固く抱き合った、二人に人々の幸せの歓喜が、降り注がれて、ハッピィ・エンドとなるのでしょうが。


(2)スペイン色濃厚な、マズルカを如何に、料理しようか

 マズルカを基調にして、と作曲者がコメントしておられますから、マズルカとして、捉えて欲しいのです。ポーランドの伝統的な民族舞曲が、なぜ、スペインなのでしょうか。エライ先生も、「ウーム」で終わっておられます(バンドジャーナル)。ただ、民俗音楽というものは、人々によって、世代・地域を越えて、伝承されて行くものですから、このようなことがあっても、良いのかも知れません。
 マズルカらしい、21・22、37・38、41・42 小節に見られる、2拍・3拍の表現は、マズルカとしての(舞曲は2小節を1つの単位として捉えます)、強調した表現が必要なのでしょう。舞曲として、55・56、71・72 小節に表れる、ヘミオラも、格好よく流れに乗せなくてはいけません。
 僕は、生でマズルカを踊っている人々を見た事もないし、民俗音楽として、聞いた事も有りません。ショパンの様式化した、ピアノ曲しか知りませんので、「マズルカとは」といった、エラそうなことは、よう云いませんが、YouTubeでの「Polish Mazur」で、民俗音楽・宮廷音楽のマズルカの音と踊りが、沢山見ることの出来るサイトがありました。この大会の映像を、参考にして下さい。


 (3)スタミナ全開、エキサイティング・パフォーマンスを

 この楽曲の最もな特徴の一つは、吹奏楽としてのオーケストレーションが完成されていて、俗にいう「よく鳴ります」でしょう。演奏する側も、かなり興奮します。コンクールという、ミスが命取りになる演奏会では、エキサイティングでありながら、冷静な大人のフォーマンスが必要ですね。
 心身ともにそのスタミナが要求されます。確固たる体力があるのか、自分たちで答えを出しなさい。この曲を選んだのは、君たちなんだ !!

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ここが審査のポイント(その1)〜吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」〜

 今日は本格的な暑さを迎えましたね。
 
Q太郎(以下Q)「センセ、久しぶりでんな。元禄演奏法、面白かったです。失礼!(笑)」

「いつも僕は、“演奏する皆さんが色々考えて、面白いドラマを創ったら、エエんや”と言うときながら、あんなん書いてどうなんやろ。」

Q「それはそれ、でっしゃろ。なんぼセンセが云うても、俺は俺やという人もいるやろし。その辺が音楽の面白さ、云うもんでっしゃろ。それより、いよいよですなぁ。センセも審査やったはったさかい、課題曲のポイントを聞いとこか、という、厚かましーい……話でんね。」

「そんなん、僕の 課題曲の中の課題と実践 2012 を読んでくれたらエエやんか。」

Q「そやけど、そこをもうちょっと、ギュッと、お願いしますわ。」

「わかった、わかった。早よ云うたら、審査のポイントはどこや、ちゅうことやな。」

Q「そうですやんか。センセは審査の際、幾つかハードルを作ったはったそうですね。その辺が聞きたいんです。」

「そやな。全体的な印象で採点するのはアカン思うて、各曲5つ位のハードルを作ってたな。」

Q「そのハードルをクリアしているかって、聞いたはったんですな。」

「ヨッシャ。それやったらな。『吹奏楽のための綺想曲「じゅげむ」』から行こか。これは多いぞ。」

Q「なんせ、真ん中以外、ほとんどメロディとリズム・バッキングで行くんやから。すぐに曲の形が出来るんで、先生はじめ、皆んながすぐ安心出来るみたいで。中学校なんか多いようですわ。」

「そうは行かんよ。この曲のポリシーをしっかり生かさんとな。洒落た演奏ができるかな。まず、アタマ。このパーカッション・アンサンブルが、1番目のハードルや。」

Q「出囃子でんな。ドラムマーチと違いますわな。そやけど、みなバンバンやってますわ。」

「本物聞かんとしゃあないわな。次は、〔D〕の手前の4小節や。クレシェンドのかけかた、4分の2拍子の“チョウスケ”の締め方。」

Q「G♭の sffz の一発。」

「そして最後の E♭。これは、フェルマータ気味に入って、Tom-tom は、2拍半位で入って来ると、格好エエんやけどなぁ。」

Q「次のハードルは、〔E〕の手前ですな。」

「そうや。この曲は、次のステージの手前で、そのバンドの実力というか指導者の実力が出よるように作ってあるんやな。」

Q「〔E〕の3小節前から、拍振るのん止めてますけど。」

「そうやね。各フレーズにキューを出して行くか。」

Q「4つ目のハードルは、数少ない tutti の〔F〕ですね。」

「指揮者が、しっかりしたイメージをもってないとね。つまり、この曲のコンセプトをふまえて、バンドの音色でそれを示すとこやな。」

Q「センセは、まず表現したい音色に、最も必要なパートだけで演奏を作って、あと少しずつパートを加える、ということをやったはったですね。」

「そう、ここは足し算で作っていったな。全部でやっといて引き算、という手もあるけど、ここはやっぱり足し算やな。」

Q「次〔H〕の前も大変ですわ。」

「ここは、課題曲の中の課題で書いているように、コード感覚とコード進行の知識がないと、わけわからんようになるしね。ウラ・コードの知識、一寸は役にたったやろ。」

Q「Jazz やってるオカゲですわ。それで、最後の〔M〕ですか。センセは、ベースに2小節ずつ喋らせたはったですね。」

「うん、これが解り易いけどな。」

Q「有り難うございました。結局そうすると、この曲のポイントは、次の場面にどないに入るかが、ポイントちゅうことでっか。」

「そうや。それぞれのステージをどない描くかは、勿論大事なこと。されど、どう入るかはもっと重要や、といえるんやな、この曲では。ほんなら、これで。」

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こんな季節にはベーシック(その3)

君たちのスタンダードを持とう

 バンドとしての基礎固めのシーズンを迎えて、もう一度基礎力を確実に身につけ、表現力を高めることを、日頃のレッスンとして、毎日を送ろう。そのための教材として、二度に分けて、ホルストの『組曲第1番・第2番』を紹介して来たね。この二曲は、明快なサウンド・美しい様式・パートの絶妙なバランス、と極めて音楽性の高い曲です。日頃のレパートリー、つまりバンドのスタンダードとして、時間あるときごとに演奏して行けば良いと思うよ。

 この二曲以外に、スタンダードの曲を君たちのバンドは持っているかな。淀川工科高校の『大阪俗謡による幻想曲』のように、自分たちが何度も演奏したい、そしてその中で学ぶべきもの、確実にやらなければならないもの、を身につけて行くんだ。これが基礎固めなんだよ。何度も繰り返し演奏し、技術を鍛え、表現力を高める、そんな基礎固めの曲、君たちのバンドのスタンダード曲を見つけよう。

 ウィンド・アンサンブルのスタンダードとしてのホルストの組曲とは、対極的な意味のスタンダードとして、もう一つの作品を紹介しましょう。それは、ヴァーツラフ・ネリベルの『二つの交響的断章』なんだ。ウィンド・アンサンブルに対して、シンフォニック・バンドのためのスタンダードと云うと良いかな。まさにシンフォニックと呼ぶべく、多彩なサウンドのドラマが、果てしなく広がって行く、この音響空間を吹奏楽と感じとる、感覚を深めるスタンダードとなるんだと思うよ。
 強烈なテュッティの間に出て来る長いソロは、美しく印象的でなければ、というソロのテイストの学習に繋がって行くんだ。冒頭に、鍵盤打楽器がモチーフを奏し、その他の打楽器群も、金管楽器群と激しく渡り合う、というドラマを展開して行くんだから、打楽器群の音色構成も、随分勉強になるね。壮大な音響空間を創り上げる、もう大編成のバンドにはたまらないスタンダードと云えるよ。

 参考音源は、やはりF.フェネル指揮、東京佼成ウインドオーケストラの「復活のシンフォニア」がお進め。なお、全日本コンクールでは、1977年奈良・天理高校のコンクール史上の名演があります。CDは、ブレーン社に在庫があるかな?
※編注:ブレーン社レジェンダリーI 天理高等学校吹奏楽部に収録)

 それでは、いよいよフレッシュマン登場の新年度が始まるね。この季節、どう取り組むか、論理と熱意に溢れた日常が期待されるんだ!!

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こんな季節にはベーシック(その2)

  今年の課題曲がお手元に届いたと思います。まだまだ、慌てないアワテナイ!!
  僕の見るところ、ヘナチョコ・バンド(シツレーイ)ほど、どれやこれやと慌てふためいていますね。君たちのバンドはどうかな?僕んとこにも、早速、電話やメールが一杯です。まあ、ここのところは落ち着いて基礎を固めておいて、その上で、バンドの特徴を生かした課題曲・自由曲の選択としましょう。
  そこで、前回のベーシック・レパートリーの続きです。

Q太郎(以下Q)「『第1番』の方ですが、やっぱり、73小節目からのハ短調への転調のとこ、感動しますわ。もう、涙がでそうです。」

「もう、話だけで涙やんか。ここは、主題の反転音程で書かれているんけど、こなん主題って、どっから出てくんねんやろな。」

Q「そして、最後が良いですね。曲いうもんわ、アタマとエンディングが劇的であって欲しいんや。この曲は、その辺が圧倒的ですね。」

「『第2番』は、『第1番』とは音楽的内容は少し違うかな。そやけど、親しみ易い、明るさを持っている、と云える名曲やね。」

Q
「第1楽章《マーチ》に出てくる“スワンシー・タウン” はユーフォニアム奏者の宝物ですね。センセには、ここへ入る前のディミヌエンド、何回も何回もやらされましたわ。」

「僕は、もう第2楽章の《恋人を愛する》で、悪いけど、自分自身に酔っていたな。こんな優しく悲しい歌は、そないにあるもんやない。Fのドリア旋法で書かれているんやな。何とも云えんな。感傷的になってしもうたな。」

Q「エンディングの Ad lib.のフレーズで、歌詞を良く読めって、云われましたわ。そうや、音楽は言葉なんやって、このとき解りました。」

「そうや、言葉が高まって来て、節がついて、という音楽の成り立ちの一つやな。"I love my love because I know my love loves me."ちゅうとこやね。」

Q「第3楽章 《鍛冶屋の歌》では、アンヴィルはどんなん使うの、ちゅうて色々やりましたね。オモロかったけど、結局、フェネルさんのおっしゃる亜鉛の水道管になりましたね。現在は使われてんし、もう無いのんとちゃいます?」

「Kang kang kang ki-ki kang のリズムもオモロかったな。なんちゅうても、第4楽章のグリーンスリーブス』が出て来るとこや。カッコエエわ。」

Q「シビレましたなぁ。こんな名曲、なんでコンクールに出てけーへんのんでっか。」

「悪いけど、この名曲を名演出来る、自信のあるバンドがないんやろな。ただ僕は、コンクールとは関係なく、ここではベーシックレパートリーとして、吹奏楽のアンサンブル、表現設計、パート・セクションの役割、なんかを勉強して欲しいのや。」

Q「オオキニ。それで名演は。やっぱりフェネルさんのんでっか。」

「そやな。1978年のクリーヴランド管弦楽団・管楽セクション盤に尽きるかな。」

 前回とともに取り上げました、ホルストの『組曲第1番・第2番』は、ぜひ一度はやってみて下さい。むしろ、やるべきだと思います。例えば、『第1番』の《シャコンヌ》を課題曲にして、地域で吹奏楽大会を開いてみては如何でしょうか。

 なお、他のベーシック・レパーリーとしては、ボーン・ウィリアムズの『イギリス民謡組曲』と、ゴードン・ジェイコブの『ウィリアムバード組曲』を上げておきます。
 また、ホルストの組曲には、初級バンドのための編曲が出版されています。無理なく演奏出来て、本物に取り組んでみようかな、と思って来ます。

 それでは、この季節、基礎固め、基礎固め。

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こんな季節にはベーシック(その1)

 間もなく春の訪れですね。バンドも卒業する人、入って来るフレッシュマン、新鮮なムードに包まれて、とても良い気持ちになります。よっしゃぁ!今年こそ、やったるでぇ!毎年のこととしても、この気持ち、気色エエやんか。

Q太郎(以下Q)「センセ。また、シーズン・インちゅうわけでして、4月からのスケジュール、よろしゅうお願いしますわ。」

「そやな、去年はリヒャルト・シュトラウスで通したし、吹奏楽のオケ版はもうエエかいな。」

Q「そうでんな、なんでこんなん、って云いもって、ようやりましたわ。爆演とでも云うんでっか。充分堪能しました。それでもう、ここらで、ちゅうて、止めていったんも居るんです。しかし、リヒャルト・シュトラウスって、やっば、魅力的ですな。」

「そう、特に管楽器の音の響きや色彩感がエエわな。それが皆んな、もともとの、って云うか、伝統的な楽器法から書かれているんで、僕も随分、勉強さしてもろうたし。あと、『ドンキ・ホーテ』だけ残っとんな。」

Q
「また、何年か先にやりますわ。それよりもセンセ、今月フレッシュマンが仰山入ってくれて、そこで、なんです。もう一回、出だしに戻ろうか、云うてますねん。」

「そうか、それはそやな。学校かってメンバーが新しくなって、4月からスタートするんやし。ここは、一つベーシックに戻るのもエエん違う。」

Q「まだ3月やのに、コンクールの自由曲や、云うてるバンドもあるけんど、一寸ここは足下見た方がって思いますね。」

「その通りや。」

Q「そこでセンセ、ベーシックちゅうたら、やっぱりあれですか。」

「そうや、ホルスト先生の『組曲第1番・第2番』やな。文句ないやろ。」

Q「オーケストラにおけるベートーヴェンの交響曲のような地位にあるって、国塩哲紀先生の文、読んだことありますよ。」

「この作品で、吹奏楽というジャンルの扉が開かれた、と考えられるよね。『第1組曲』のシャコンヌだけを取り上げても、その芸術的価値もさることながら、ウィンド・アンサンブルとしての全てと云ってもエエぐらい、多くの要素が書かれているんやな。」

Q「高一のとき、毎日やりましたわ。わりとシンプルに書かれているんやけど、飾り気がないだけに結構難しかったです。」

「そのかわり、きっちりやれば、絶対に基礎力はがっちり付くね。」

Q「なんちゅうか、合奏の力って云うのですか、皆が表現を考えるようになりました。」

「それが、いつも云うてる音楽性がついて来る、と云う話や。」

Q「東京佼成にもお出でになった、フェネルさんとイーストマン・ウィンド・アンサンブルの演奏を、よーく聞きましたよ。」

「1955年の録音なんやけど、このマーキュリー版は、一般のクラシック・ファンにも愛聴された、歴史的名盤やな。勿論、1977年公開された、ホルストの自筆スコアを検証して録音した、クリーヴランド管弦楽団の管楽器奏者を集めた、極めて洗練された演奏もあるけどな。」

Q「1980年に出版された、インストゥルメンタリスト※編注:アメリカの器楽雑誌「Instrumentalist」)の論文のことですな。センセには、指揮法と合わせて、仰山話し聞きましたわ。」
 
 Q太郎との会話は、いつもこんな調子で。この日も同様です。この続きは、次回に。『第2番』のこともあるし、別の意味でのベーシックの話もあるし。ではまた、お会いしましょう。

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コンクール雑感(その2)

(その1)はコチラ

Q太郎
(以下:Q)「ほなセンセ、いよいよ中身、つまりソフトに行きましょか。センセ、まず課題曲ですが。」

「そやな。コンクールやねんから、課題曲はものすごいもんでないとアカンねんや。どうものすごいかちゅうと、そのコンクールの目指す、つまり吹奏楽の現状から、この先を見据えた、どう云うたらエエかな、方向性と云うか、コンセプトと云うか、そんなもんが鮮明に見えてこんとアカンのや。」

「ただ、コンクールや云うて、勝った負けた、金や銀やちゅうてるだけではアカン、と云うことでっか。」

「そうや。部活ちゅうもんは、何ちゅうても学校教育の延長線にあるもんや。だから、音楽教育の延長線上になけりゃあアカンし、生徒指導の役割も果たしてなアカンのんや。」

「何やエライ方向に広がってしまいましたな。そんなこと、現場の先生方みんな解ったはりまっせ。そやから、センセはどない考えたはんね。」

「まず、中学生・高校生・大学生・社会人の年齢、つまり人の成長の過程に合った、内容・技術を持った音楽と向き合う、という考え方から、一昔前のように、各カテゴリーに合った課題曲がエエのんとちゃう?」

「音楽をずうっと人生のナガーイお友達……っと、考えるんですか。」

「そうや。まあ青春のひとときを音楽に賭ける、って云うのんもエエけどな。音楽が日常になってる欧米を見て来ると、人と音楽の深い縁を思い切り知らされてなぁ。」

「音楽文化が歴史とともに存在する。やっぱり、西欧は文化高いねんや。」

「次に、コンクールやから、課題曲がものすごいもんでないとアカン、とさっき云いましたな。演奏時間を12分として、課題曲は6分位で音楽の要素を充分持った、音楽性豊かな作品にしたいなぁ。勿論、大編成・小編成別(このカテゴリーについては、前回を見て下さい)に用意しますね。委嘱する作曲家も、国際色豊かに求めてみたいもんや。毎年幅広く、カテゴリーの違った音楽に出会うことは楽しいことやんか。」

「課題曲勝負となるんですね。」

「そら、コンクールやからな。それから、大編成の方は、編成が標準化してるさかい、課題曲もその編成で作曲されたもんでエエ。一方小編成、つまりウィンド・アンサンブルは、編成から個性を求めるんやから、例えばやな、ピアノ譜かコンデンス譜で出す、ちゅうのはどうや。」

「そらオモロイわ。自分達の編成に合わせて編曲するわけでんな。もう、ここから勝負が始まってんねんや。」

「かって、そんな課題曲あったん知っとるか。」

「そんなんよう知っとりますがな。センセの『雲コラ』でっしゃろがな。」(※編注:1994年度課題曲検惘世離灰蕁璽献紂

「そうや。あの時は全国大会でも 33のバンドが、それぞれ違った響きを創り出す、といったまあユニークというか。同じ課題曲やのにね。まさにコラージュやったなぁ。」

「それを小編成の部でやろうって、思たはんねんな。」

「そうや。そこから、また次の吹奏楽が見えて来るのんと違う?」

「演奏例なんて云うのも、もうイッパーイ出て来よるし、課題曲の中の課題なんかも、多くの音楽家が分析して、ケンケンガクガク。エエ勉強になりそうでんな。ほんで、自由曲はどないなります?」

「自分のバンドの特色を、もう一寸云うておきたい、ちゅう考えで付け足すと云う考えで、マーチとか組曲の中の1曲とか、バレエの1シーンとか、大きい曲の1部でもエエと思うよ。全国大会でのレパートリーを見てると、印象派以降の現代音楽的な曲が中心になって、中学生・高校生いや大学生にとっても、内容的にも技術的にも、いわゆる難曲が多いんやけど、これはこれでエエかも。内容や音楽の作りは、多分理解し難いと思うんやけど、感覚とかイメージで捉えることは出来るかもしれんしな。あと技術は、もうこれは訓練や。時間かけたらエエんや。」

「自由曲に取り上げられた曲が、レパートリーとして定着してるのんも多いですね。」

「それに、吹奏楽の多様性をまだまだ思わせる、『中国の不思議な役人』、『ダフニスとクロエ』、バルトークの『管弦楽のための協奏曲』の登場なんか、一昔は考えられんかったもんな。」

 コンクールの話を続けている内に、Q太郎も僕も、やっぱり愛している吹奏楽の未来を見つめて、熱くなって行きました。コンクールが一つの目標となって、切磋琢磨して、大きな音楽文化を作り上げ、日本の音楽が日常となって欲しい、と思っております。

 さて僕は、クラシックの中で、親しみ易い・皆さんが良く知っている、セミ・クラと云われている曲のアレンジを書き始めています。まずはブラームスの『ハンガリー舞曲』です。オーケストラの編曲とは違った、まさに「吹奏楽のための」を、強調したいんです。よろしく。

 さあ、次回はまた本職の音楽理論、コードのお話に戻ります。

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【ウィンズスコア編集部より】
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