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コンクール雑感(その1)

「コンクールに明けて、コンクールに暮れる。」と云ってしまうと味気なぁーい気分になってしまいそうですが、こんな表現も出来る、日本の吹奏楽ですやんか。良ういうたら、コンクールあっての吹奏楽ですやろ。そら、他にも定演やら、式典への参加・地域活動・チャリティ活動……、ギョウサンあるのん解っとります。そやけど、全日本コンクールが他の活動への発火点にもなっているし、軸・芯・核にもなっているのんと違いますか??僕かって、コンクールには大いに興味あるし、そやから、毎年「課題曲の中の課題」ちゅうヤツを書いてまんねん。

 まあそんなことで、今回のブログ、コンクールへの僕なりの想いを書いてみます。
 ちょっとだけお断りしときます。こんな僕の想いを書いたと云うて、今のコンクールには問題が多いんやとか、そやからアカンちゅうたり、ましてはヤメテマエ、とか云うてんのとちゃいますんで、誤解せんとくりゃぁすね。コンクールへの、単なる僕の想いです。

 それでは、コンクール云うねんやから、規定(ハードの部分やな)から話を始めまひょか。
 まず、カテゴリーです。中学校・高等学校・大学……と、年齢と団体を兼ねた形で分けられているんやけど、これを中学生・高校生・大学生・社会人の部と、年齢で1つのカテゴリーにしたらどう?勿論、1つの学校単位で参加してもエエし、幾つかの学校が合同してもエエし……、と云うわけ。学校の名誉をかけるのも良いし、学校間の交流を深めるのも良いし。
 一番オモロイのんが、社会人の部になるのんと違うやろか。地域の活性化や、会社の営業拡大にも役立つし。職場とか一般云うてた昔からみたら、沢山の人材が入り乱れて、バンドを作り上げるんやから、ドダイ大きく夢が広がりよる。どこかの会社の社員のためのバンドがが中心になって、ようけい人が集まるのもエエんと違う?
 レシピ大売れの社員食堂に街の人がようけい来ても、エエのんと違う?
 百貨店のバンドやったら、ようけ主婦さんが来てくれるでぇ。
 お菓子の会社やったら、若い女の子で一杯や。
 病院のバンドには、元患者も一緒になって、お世話になったドクター、看護師さんと音楽やるねん。
 いっそ、外国との交流ちゅう、国際バンドでやってもうたろか。
 どこかの学校の卒業生が中心になってもエエし、なんぼでもユニークなバンドが出来よって、レパートリーは広がるし、レヴェルは上がるし、一般の聴衆の皆さんは、喜ぶし。

「この辺が、お役所的に云うと“生涯学習の充実”ということになるんやないかな。文科省からお金くれるかもね。」

Q太郎(以下:)「センセ、それは甘いわ。」

「よっしゃ。次は人数制限やけど、これは決めておいた方が良いなぁ。コンクールちゅうのは、やっぱりスポーツ的なところが出て来るものや。30〜50名の編成(コンサート・バンドとでも云うとこか)と、10〜30名の編成(ウインド・アンサンブルちゅうとこか)でどうや。」

「音楽の質の違いで2つのカテゴリーにしよう、と云うわけですか。」

「そうや。2つのカテゴリーとも全国大会までやるんや。」

「そうですね。小編成をそだてよう、と云うねんやったら、小編成の全国大会をやらんとアカンですね。日程や経費とかで無理やったら、隔年ごとにやったら良いんや。」

「エエこと云うなぁ。“小編成=弱小バンド”という、変なイメージを払拭せねばならんのじゃ。全国大会をやったら、ウィンド・アンサンブルのスゴイヤツがやって来るぞ!室内管楽アンサンブルの発展に繋がるんだ。」

演奏時間の制限は仕方ないですか。現在の12分では、一寸短いように思うんですが。」

「運営面の理由やろう。仕方ない。ただ、時間オーバー即失格は教育的でないな。減点位にしておいてやらんと。」

 コンクールのことになると、Q太郎とも色んな話題が出て来ます。やっぱり、なんちゅうてもコンクールの話には、夢中になってしまいます。日本の吹奏楽族の宿命みたいなもんです。次回は、課題曲・レパートリー・評価など、ソフト面にQ太郎と切り込んでみます。
 ではまた。

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【ウィンズスコア編集部より】
下のコメント欄(comments)にて、櫛田先生へのメッセージ・質問等を受け付けております。後日まとめて、先生にお返事していただきますので、疑問や悩みをぶつけて下さい!


沈黙……そして生還

 6/9のブログで、私が「未破裂脳動脈瘤」を持っていること、これはいつか破裂して、死に至ることをお話いたしました。そして、その「未破裂脳動脈瘤」の破裂を防ぐための手術を受けること、そしてその準備に掛かっていることを、お話しました。

  ご報告いたします。世に「神の手」と呼ばれておられる、素晴らしいドクターにお会い出来、そのドクターひきいる医療スタッフの方々の、技術と使命感あふれるご努力のもと、未破裂脳動脈瘤の破裂を予防する手術に成功いたしました。また。皆様方と同じフィールドに立って、ご一緒にお仕事が出来ますこと、大変幸せでございます。

 全身麻酔で沈黙を続ける中、足の付け根から動脈に入れられたカテーテル(手術用の管)が体の動脈を通り、頸動脈を通過し、脳に到達します。その距離1.5メートル。
 そこで、そのカテーテルに仕込まれた第2の細いカテーテルが、脳の動脈に添って患部に向かいます。脳の細い入り組んだ、間違えば何らかの機能障害を引き起こす「脳動脈」です。もう許される誤差0.01ミリの世界です。これをモニター映像で捉えながら、スタッフがタッグを組んで実行するわけです。こちとらの、アンサンブルがどうの・ハーモニーが濁る・アタマが合ってない、なんていうヤワな話ではありません。

 そして、動脈瘤の入り口に達します。いよいよ、カテーテルに仕込まれた、プラチナのコイルが抜かれ、動脈瘤の内部に埋め込まれて行きます。1本目のコイルが入れば、次々その中に2本目・3本目のコイルというように埋めて行きます。これで、動脈瘤の中に血液が流れ込まないようにするわけです。
 3時間の沈黙の中で、全ての生活が止まり、人口呼吸器によって生命が保たれ、この命の儀式とも云える手術は終わりました。

「櫛田さん、終わりましたよ。」のドクターの声が遠くから聞こえ、「生還したな」という感覚が体内を巡りました。

 また、仕事が出来る、この実感は、人生の幸せを再び呼び起こしてくれました。復帰した・復帰できたと云ってしまう以上のものがあります。まさに、「新生」です。新しい何かが、湧き上がって来る思いです。

 ドクター・医療スタッフの方々の、ものすごい技術と使命感で、新生することが出来た今、支えられ応援して頂いた多くの方々への感謝の心を持って、次の作品に取り組みたいと思います。勿論、ブログも音楽理論・音楽批評を中心に書き続けます。よろしく、ご支援下さい。

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【ウィンズスコア編集部より】
下のコメント欄(comments)にて、櫛田先生へのメッセージ・質問等を受け付けております。後日まとめて、先生にお返事していただきますので、疑問や悩みをぶつけて下さい!


(追記あり)東北地方太平洋沖地震にふれて

 早くも半月になりました。あらためまして、この度の東北地方太平洋沖地震により、犠牲となられました方々のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災されました皆様方に心からお見舞い申し上げます。
 この半月の間、ぼくは音楽家として、どう考え、何をすべきか考えてきました。答えは、やはり音楽をすることでした。音楽をすることで、生きることの素晴らしさ・愛の絆・悲しみ・喜び・せつなさを深く知ることが出来ます。音楽の持つ大きなな力は、生きることの素晴らしさを教えてくれました。

 沢山の吹奏楽族・BANDの皆さん、今こそ奮い立って、音楽をやろう!そして、生きることの喜びを、しっかり胸に抱こう。

 コンサートを控えてる吹奏楽団の皆さん、素晴らしい演奏会にしよう。

 楽器を奪われてしまった被災された皆さん、楽器がなくても音楽は生きています。歌おうよ!

 被災を免れた、全国の多くの皆さん、被災された方に思いを込めて、楽器を置いて音楽をやりませんか。そう「コーラス」だ。生きているなによりの「あかし」だ。これは、音楽の源を教えてくれる、良い機会になるよ。「心に太陽を、唇の歌を」だ。

 ぼくは、打ちひしがれた被災地の方々の報道の中で、人の社会のあり方の素晴らしさが、蘇って来ることを、毎日のように知りました。ぼくも、この力強さの中で、『組曲「星の王子さま」』を書き上げることが出来ました。
 復興の願いは、一人ひとりが、今出来る最大限のことをやり遂げ、希望の思いを育て上げることでしょう。

(2011/3/30追記)
 さて、僕の事で恐縮ですが、全日本吹奏楽連盟から「楽しい吹奏楽」シリーズとして、かつての課題曲『東北地方の民謡によるコラージュ』が新しく出版されることは、このブログでも以前書きましたし、もう多くの皆さんのご支持を頂き感謝いたしております。東北地方の民謡を素材にしたこと、つまり東北地方の皆さんからお力を得た作品です。その発売のおりしも、この東北地方の皆さんを襲ったこの災害です。この曲が東北地方の皆さんの応援歌になって欲しいと思います。そんな心を込めて、この『東北地方の民謡によるコラージュ』の印税を全額、東北吹奏楽連盟に寄付することにしました。全く些細な力です。復興にかかる時間はどれ位のものか、想像つきませんが、応援し続けたいと思います。音楽の、吹奏楽の素晴らしい力を皆んなで。

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【ウィンズスコア編集部より】
3月11日ごろに「2月のコメントへのお返事」を掲載する予定でしたが、折しも震災があり、しばらく更新を自粛しておりました。先日、櫛田先生より上記のメッセージをいただきましたので、先に掲載させていただきます。コメントへのお返事は改めて掲載いたしますので、ご了承下さい。

吹奏楽の市民化に一生を捧げられた指揮者・永野慶作 先生

 このブログで、このようなかたちで思い出を語るのは、昨年の洛南高校の宮本輝紀先生に次いで、二度目になります。まだ、1年にもなりません。なぜこんな淋しいことが、次々とやって来るのでしょうか。
 永野慶作先生に、2011年の年賀状をお送りしました。ウサギ年ですから、シャッフル・リズムに乗った、ファンキーっぽいブルースを書いて、得意げに……。頂いたお返事は、ご家族からのものでした。
「父、永野慶作は、去る12月29日、83歳にて永眠致しました。」
 また、僕たちは、吹奏楽の大切な方を失いました。もう、次々と……。言葉がありません。音楽だけでなく、色々何でも、お話して頂いていた先生です。

 先生とは、よう一緒になりましたなぁ。大阪市音楽団の三代目の団長さんの、辻井市太郎 先生(辻井家と僕の家とは、一寸した親戚関係でして)からのお引き合わせが、始まりでした。『飛鳥』の初演のときです。それから、先生が、四代目の団長さんを引き継がれてからは、よく大阪市音楽団へ参りました。

先生「誰も書けへんこと書かはったらエエ。難しいことはイランよ。お客さんが、ホンになぁ、と思われるもんがエエんや。」
「僕は、日本人やさかい、日本人しか書けへんのんですけど。」
先生「当たり前や。日本人が日本人の心を書いて、日本人が感動する、そんな曲がエエんや。大栗さんかって、そやんか。櫛田さんは、京都を書かんと、アカンでぇ。」
「ホナ、嵯峨野はどうです ? 」
先生「そらエエわ。そうや、箏を使いなさい。わしの知ってる菊橋元美さんいうお師匠はん、紹介するわ。」

 永野慶作先生との共同作業の1作目は『嵯峨野に寄せる2章』(1974)でした。吹奏楽に箏を加えることによって、より邦楽の世界を描くことが出来るのでは、というお考えでした。また、邦楽関係の違った聴衆をお迎えすることが出来るのではないか、そんなお考えもあったようです。常に、皆に愛される吹奏楽、誰もが好きになれる吹奏楽を、目指しておられました。
 なお、第2作は『雪月花』(1978・大田三中の原曲、3楽章20分)で、これも箏の菊橋先生のグループとの協演でした。

 大正12年(1923) の大阪音楽隊(当時はそのように呼んでいました)の設立趣意書にある「……一層音楽趣味の普及を図り、本市の風致を温雅なる基礎の上に培養せざるべからざる事、頗る緊切なるものあり……」のもとに、市民と共にある吹奏楽を演奏し続けられました。
 春になると、甲子園にセンバツ行進曲が流れます。この入場行進曲の22年にわたる編曲も、この市民と共にの、大きなお仕事の1つでありました。
 
 コンクールの審査員として、本当によくご一緒させていただきました。北陸大会・東海大会が一番多かったでしょうか。大音量で力づくで、聴衆を圧倒しようという演奏より、情緒豊かに、情感の迫り来る、といった歌い上げる演奏を評価されていたように思います。オーケストラ作品における、編曲・演奏表現には、その方法論として、大変厳しかったですね。
 先生は、料理が好きだったみたいで、僕も好きです。アレンジのこと、「クッキン」と云いますよね。

先生「わしは、筑前炊き(筑前煮・がめ煮)が好きでな。」
「いやぁ、僕もあれ好きでして。」
先生「砂糖・醤油・酒は、同量がエエで。」
「いやぁ、2:3:4でっせ。」
先生「やっぱり、京都やね。甘いのはアカンか。」
「甘いのんは、江戸でっせ。」

 審査の帰りの列車で、何でこんな話になんの?
 車窓から見えた風景に、思わず

「こんなとこに、住んでみたいなぁ。」
先生「アホゥ、こんなとこ救急車5分で来てくれへんで。」
 
 けったいな会話です。永野先生との話やったら、まだまだ仰山ありまっせ。また何かの機会に。

 最後に、指揮者・永野慶作の名演の1つ・2つを、ご焼香とともに。
・第23回定期(1974):大阪俗謡による幻想曲/大栗裕
・第34回定期(1977):イタリア奇想曲/ピヨートル・I・チャイコフスキー
・第40回定期(1980):シンフォニア・ノビリッシマ/ロバート・E・ジェーガー

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【ウィンズスコア編集部より】
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続・小編成バンドへのお誘い〜小編成バンドのためのレパートリー〜

 さあ、新しい年や。ウサギ年やから、もうここは、シャッフルのリズムに乗って、前向きに跳んで行くしかないね。そう、ウサギは前へしか跳ばんもんや。
 
 さて、年末に「小編成バンドへのお誘い」を書きました。いま吹奏楽は、大編成で一体感のある、洗練されたバフォーマンスでもって聴衆を圧倒する、といった表現が主流を占めているように思います。清澄なハーモニーというよりは、テンションの高い音響がプレッシャーをかけてきます。そして、情感のある旋律というより、細分化された技巧的な音が、洪水のように溢れ、聴衆を容赦なく打ちのめします。聴衆からすれば、それはそれで、もう、マイッタマイッタの連続であります。スゴーイ!

 その驚きはそれはそれとして、やはり音楽の持つ、喜怒哀楽の表現・情緒の表現を、失って欲しくないのです。つまり、もう一度取り戻すということを、考えても良いのでは、と思っているわけです。そんなことで、「小編成バンドへのお誘い」を書きました。情感の豊かな、情緒豊かな、キメの細かい、といった表現は、小編成バンド(ウィンド・アンサンブルと呼べば良いんでしょうか)が得意とするところです。
 
 そうこう云っているところで朗報を1つ。僕と同じように、全日本吹奏楽連盟でも、小編成バンドの育成が、連盟の取り組みの1つとして重要視されて来たようです。
 まず、小編成バンドが対応出来るレパートリーを整備しようと云うことです。その1つの施策として、過去の課題曲の中から、いわば人気曲を、作曲者によって、小編成バンドのために新しく改変して頂き出版しようという取り組みなのです。
 その第一弾として、2011年3月に、東海林 修さんの『ディスコ・キッド』、杉本 幸一さん(小長谷 宗一氏補作)の『カーニバルのマーチ』、後藤 洋さんの新曲(楽しみだ!)、そして僕の『東北地方の民謡によるコラージュ』の4曲がセットで出版されます(4曲セットで¥3,000。ゼロの数、間違っていないよ!)。
(編注:詳細は
全日本吹奏楽連盟へお問い合わせ下さい。)

 僕の『東北地方の〜』は、2管編成(トランペット、クラリネットなど、各パートは 2nd. まで)にして、新しい部分を書き加えて、演奏時間も6分30秒になっています。この曲は東北地方の民謡を素材にして、「和」の空間を西洋の管打で創り出そう、という大変な課題に挑戦した、僕の大仕事だったのです。即興的な歌い回し、「間(マ)」の取り方は、大編成のバンドは苦労するところでしょうが、ここが小編成バンドの見せ所となるのでしょうね。

 小編成バンドへのレパートリーとしては、『秋の平安京』はスイス・ウスター国際音楽祭で27名のバンドだったし、『石の庭』『飛鳥』だって『元禄』でも2管編成ですから、僕自身がウィンド・アンサンブル指向が強いんかな。小編成バンドへのお誘いを書く以上、僕かって小編成バンドのためのレパートリーを書かないとね。 
 まず新年の仕事として、3月までには、これも課題曲だった『雲のコラージュ』、大田三中でブレークした『雪月花』、『組曲「星の王子さま」』を2管編成でまとめたいと思っています。出版は勿論 Winds Score ということかな。

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【ウィンズスコア編集部より】
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小編成バンドへのお誘い

 バンドの編成が、吹奏楽人口が増え、レパートリーが多様化し、楽器も完備し、表現技術が向上し、といった多くの点から、小から大へと変身して来ました。このことは、吹奏楽の発展と見るべきことには、まず間違いはないでしょう。

 オーケストラの歴史をみても、1750年ごろ、バッハのいたライプツィヒのオーケストラは25名位で、メンデルスゾーンの時代までは、せいぜい40名位だったのです。ベートーヴェンの『英雄』も当時は30名位で演奏しています。ベルリオーズ、リスト、R.シュトラウスなどによって膨張されたオーケストラは、現在ベートーヴェン当時の3倍以上の編成になりました。

 吹奏楽も、25名そこそこのスクール・バンドが、今や50〜60名、いや100名近い部員を要するようになりました。一方、少子化の中で、部員が減少しスクール・バンド発祥時の20〜30名編成になったという、現状もあります。私が今、注目しているのは、このいわゆる小編成と呼ばれている、20〜30名編成のバンドです。
 
 そもそも管楽器の合奏、つまりウィンド・アンサンブルは、各パート1名の編成が理想と思っています。そうすると大体、打楽器を加えて、25名そこそこになるのではないでしょうか。50名以上100名近い大編成のバンドの発する音響の洪水は、ハーモニーの奇形化と云えば、言い過ぎでしょうか。トーン・クラスターに近い、音響を要する楽曲では、この大編成も必要かも知れませんが(だから、昨今このような楽曲が多く見られます)。ここでもう一度、豊かなハーモニー、清澄な響きを持ったアンサンブルを取り戻してはどうでしょうか。
 部員が50名であれば、部員のレヴェルに合わせてバンドを2つ作り、違うレパートリーを2名の指導者が、それぞれのバンドの指導に当たります。部活動の中に刺激(競争意識)が生まれ、惰性的なナアナア・ムードに緊張が走ります。

 練習中よく、他の「人の音を良く聴いて」と、云われると思います。小編成ではこれが本当に出来ます。100名近くになっていて、本当に他の人の音が聴けるのでしょうか?うっかりすると、パート内でもあぶないのではないでしょうか。もう一度、合奏の本来の姿、つまりそれぞれの楽器の個性的な音色の美しさ・ハーモニーの豊かさなどを求めてみませんか。
 合奏とは、メンバーの個性・人格が触れ合う姿です。すうっと一度周りを見てみると、メンバーの顔がすぐに見える。こんなバンドこそが、メンバーの日常を皆で共有出来て、音楽の表現のみならず、生活の基盤にもなるのではないでしょうか。

 2011年、音楽活動に何かを求めるとき、そんな一つとして、小編成バンドでの活動をお勧めします。

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【ウィンズスコア編集部より】
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アンサンブルで何を得るのか。期待されるアンサンブル像とは。

 この時期、それぞれのバンドは、来春の新編成に向かって、現部員による基礎固めに入ります。一番は、メンバーの音楽表現技術の向上です。その一つの場として、吹奏楽連盟が考えたのが、アンサンブルコンテストなのです。良い時期に良い企画だと思っています。
 じゃあこの企画にノルとして、アンサンブル活動をどのように捉えて行けば良いか、このことを念頭に、今日はアンサンブルのことについて、書いてみます。

(1)編成について
 まず編成の基本は、メンバーの音楽表現の技術(の水準)が限りなく揃っていることです。3人までは良いが、4人目がガタッと落ちる、これはもうどうしょうもありません。Sax四重奏を設定し、Tenor Saxがちょっと心もとないが、仕方ないやんか入れとかんと、なんていう考え方は音楽表現の向上にはつながりません。この場合、1人は他の人に気を使って萎縮するし、他の3人は足を引っ張られて、結局皆んなストレスをためるだけです。
 じゃあこんなとき、どうする?3人でやるか、やめるか、だけです。3人でやるには、そのためのアレンジが必要ですが、これは避けられないところです。
 もとに戻ります。要するに、音楽水準のレヴェルの高さで、編成すること(!)です。既成の(トラディショナルな)楽曲編成には成らない場合が多いかもしれませんが、無理に売り譜の編成に合わさないことです。逆に、恐ろしくオリジナルな編成が出来るかも知れません。

(2)演奏表現のポイント1:音色
 アンサンブル表現の第一の要点は「音色」です。これが一致していないと、表現に濁りが生じます。同族楽器の場合は、もう覿面(てきめん)です。自然に合っていれば、それだけでも、そのアンサンブルの水準はイケテます。そうでない場合は、音楽表現(あくまで)の中心になるメンバーの音色に合わせます。そして、トータルで澄んだアンサンブルの音色が創り出せます。音色が澄んで美しいだけで、充分に聴衆を感動させることが出来ます。

(3)演奏表現のポイント2:表現技術
 「音色」以外の楽器演奏の技術が確かなものでないと、アンサンブルは出来ません。逆に云うと、個人個人の技術が絶対なアンサンブルだからこそ、個人個人の技術を磨くのに良い場なんです。大編成と違って、一人ひとりの表現責任は重く、少しでも不十分なところが存在すれば、アンサンブルは壊れます。演奏は、完璧を目指しましょう。

(4)演奏表現のポイント3:理解力
 アンサンブルは組織です。組織として、何が目的なのか、その中で自分の役割は何か、がしっかり理解出来ていないと駄目です。何を表現したいのか、どういった構成(ストーリー)にするのか、を徹底的に話しましょう。そして、楽曲の流れの中での、自分の役割を理解します。それで良いかは、独りよがりにならず、メンバーとも話合います。取りあえず音を出してみて、どうのこうのとやって行くのは、ムダな時間を取られることが多いです。大事なのは、最初の一歩です。いやぁ、もう踏み出してしまったやんか、という人は今からでも遅くないよ。始まりに帰って、話してみましょ。

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紅葉の美しい秋に、美しい心に

 11/20、21日と続けて、美しい音楽の心に出会いました。音程がどうの、アインザッツが合っていないとか、金賞がどうのこうのとか、勝った負けたとか、そんなことでしか音楽でけへん方々にぜひ、聞いて頂きたいのです。

 20日、京都府立宇治支援学校の「校歌発表・公開録音会」が、京都の八幡市文化センター・ホールで開催されました。校歌は僕が作曲させてさせて頂きました。
 「支援学校」って知ってます?色々な・多くの障害を抱えた、多くの児童・生徒とともに、ノーマライゼーション社会の推進に貢献しようとする学校です。小学生から高校生まで、その年齢(障害)に応じて、教科学習とともに、「遊び」「生活」「作業」を通して、将来の自立と社会参加を目指して、日々多くのことを学んで行きます。
 校内には、地域交流室を持ち、地域の多くの方々といつも一緒に生活出来るフィールドを持っています。勿論、ここは音楽ホールでもあります。
 学校のコンセプトは、校歌に歌われている「喜びはともにあること」です。何と自然な美しい心と思いませんか。人が人と支え合う社会を目指します。メンバーの一人ひとりを、理解し支え合って、美しい感動を創り出そうとする、吹奏楽団・アンサンブルの活動と同じコンセプトではありませんか。
 
 21日も、別な意味でもう一つの心の繋がりを見ることが出来ました。京都会館で開催された、「鈴江 昭記念ウインドオーケストラ演奏会2010」というコンサートです。鈴江 昭先生は、高等学校の国語の先生で、ご退任の時は校長先生でした。かつて多数の吹奏楽部の顧問をされ、それぞれの学校の卒業生諸君が、先生の退官記念にと昨年コンサートを開催し、今回が2度目となります。
 ここには、音楽をする喜びが満ちあふれています。こんなに暖かなサウンドの、市民バンドを聴いたことはありません。
 このバンドのコンセプトは「中学生より一途に、高校生よりひたむきに」です。何と素晴らしいと思いませんか。金賞とったらもう卒業や、金賞とるために集まらへん、こんなバンドとはレヴェルが違います。
 このコンサートのキャッチフレーズも「音楽をシェアしたい!」と素晴らしい。そのシェアの一つとして、カンボジアの子供達に、使わなくなった鍵盤ハーモニカを送ろう、という活動をしています。この日も会場で、 165台の鍵盤ハーモニカが集まりました。市民バンドのあり方として、音楽を共有できるフィールドを、創って行きたいですね。
 僕には、このコンサートで、来年、京都で開かれる「国民文化祭」のメッセージソング『微笑みの空』(作曲:東儀秀樹、編曲:櫛田てつ之扶)の初演がありまして、2000人の聴衆の皆様方と、シェアすることが出来たのでした。

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吹奏楽に魂を捧げた一人の指揮者・宮本輝紀

もう一ヶ月近くになってしまいました。

今月1日、京都・洛南高等学校吹奏楽部を指導されていた、宮本輝紀先生とのお別れに、突然に出会うことになりました。
神は、時としてこのような惨いことを、私たちに断りなく降り注がれます。

吹奏楽に魂を捧げられた、指導者・指揮者のお一人です。
ブログという、こんな場所で宮本先生のことを書くこと、本当に礼を失していますが、やはり書きたくなりました。

宮本先生と僕との関係は、実は保護者と教師なのです。
お子さん(ご長男の直人君)が学習されていたクラスでの、僕の公開授業(僕は数学の教師だったのです)に、参観にお見えになりました。
廊下の窓越しにニコッとされて、百戦錬磨の僕もドキドキッと、いう思い出があります。

毎年開く僕の課題曲研修会には、必ず前席でノートされ、貴重なご意見も多く頂きました。今年も、親子(僕の教え子の直人君も、高校のバンドの指導者になっています)で、お見えになっていました。

宮本先生と僕との共有できた最大の接点は、「吹奏楽」を追求することへの情熱でした。オーケストラでもジャズバンド、ロックバンドでもない、「吹奏楽」(管楽アンサンブル)への憧れであり、サウンド追求でもありました。
取り上げる曲のジャンル(歴史的な純音楽から大衆音楽にいたる全ての)がいずれであっても、「吹奏楽」として如何なるサウンドに創り上げて行くか、宮本先生は、この課題を常に前面に押し出しておられて来ました。
洛南高等学校吹奏楽部の数々の名演は、このオリジナリティ溢れる宮本サウンドが渦巻いています。

1981年 道化師の朝の歌
1999年 ダフニスとクロエ
2001年 アメリカの騎士より「選ばれし者」
2005年 交響曲第1番「ギルガメッシュ」より

などは、宮本サウンドの代表名演だと思います。

「もうボチボチ僕の曲やりませんか?」
先生「そうやな。そやけど難しいな。」
「そんなに難しい書いてへんで。」
先生「いやいや、吹奏楽でこんなに“和”が表現されていることに、驚いてばかり居るんです。(こう云われると、僕としては嬉しい限りですが)日本人として“和”の感性が分かるばっかりに。それに、“和”の音楽は、即興的でしょう。それをアンサンブルならともかく、多数集団でやる難しさ。」
「ほな、西洋音楽やったら?」
先生「学習した理論やサウンド主体にやれるんやから。それにしても櫛田作品の全音符・4分音符はコワイなぁ。」
「日本人やさかい、その辺は分かるのんと違う。」
先生「最前も云ったように、ものすごく分かるし、そこをどう振ったらエエか、これが難しい。それからもう一つ。もし私がやったら、うちの生徒ハマッテしまいそうで、これもコワイ(笑)。」
「そんな魔性はあらへんつもりよ。」
先生「そやけど、誰もやらんようになった時、絶対やる、やり続けますよ。(有り難うございます)」

なんやねん。そんなこと云うといて、僕より先に、向こうへ行ってしもうて。天国バンドも、エエ指揮者がやはり欲しいんやね。
その内、作曲者も呼ばれることになるんやね。ほな一緒にやれるんや。
そうや。今日はお彼岸や。

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【ウィンズスコア編集部より】
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すべての道は「アレンジ」街道

アレンジ曲のかかえる問題、吹奏楽人としては、さけて通れるものではないよねオリジナル曲以外は、クラシックだけに限らずすべてアレンジもんということになるんやさかい。
僕も、オーケストラに肉迫(?)する驚嘆アレンジを書いてやろうか、と心のどこかがソワソワと囁いてはいるんやけど、そう簡単にはいかへんのや
歴史的大作曲家のオーケストレーション、そんなに簡単なもんやないデェー

そこデェーだ。
スィッチを切り換えてアレンジすることで、オーケストラから離れて吹奏楽作品として創り上げてしもたる、このコンセプトもありやないかな
アレンジ曲と云うても、何やもともと吹奏楽のための、つまりオリジナル曲の匂いがワァーッと広がって来よるのんもエエもんちやう

鈴木 英史編曲・レハール作曲『喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション』、
瀬尾 宗利編曲・アーノルド作曲『組曲「第六の幸運をもたらす宿」より』、
後藤 洋編曲・プッチーニ作曲『歌劇「トゥーランドット」より』。

名旋律や色彩豊かなオーケストレーションに溢れた原曲やさかい、そらアレンジャーの腕の見せ所も一杯や
それにしても、この3曲はよう出来てるわ。
これは、もうアレンジ曲と違うて、オリジナル曲云うてもエエのんと違う
歌劇や喜歌劇、ミュージカルや映画音楽のセレクションがエエのんかな。原曲のエエトコ取りで、吹奏楽に仕上げて行くんやから、アレンジャーにとってもエエ気持ちや。

アレンジされた曲が、吹奏楽(らしく)になっとるかどうか、簡単に云うたらこんなことやない
これは、クラシック以外の曲にも云えると思うよ。
だから、僕もジャズ・ロック・ポップスをアレンジするとき、吹奏楽のオリジナル曲としてアレンジしているんだよ(Wins Score吹奏楽ジャズを)
クラシックの曲でも、出来るだけ吹奏楽っぽくアレンジ出来る、ラフマニノフ作曲の『前奏曲 Op23-5』や、ブラームス作曲の『ハンガリア舞曲』なんかも手がけているんやけど。

僕らの周りでは、ニーズに応じて、流行のポップス・チューンが次々アレンジされているんやけど、粗製乱造に陥ることなく、確固たる吹奏楽レパートリーを創り出すという(スゴーイ)、コンセプトを持って欲しいんだな

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【ウィンズスコア編集部より】
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